部下が桁を見余って大損失を出したり、納期を1週間見間違えたりなど、激高したくなるシーンはつきものです。
しかし、怒っても何も解決しません。それどころか部下の心は離れ、表面的な謝罪で終始する恐れもあります。
必要なのは、部下が反省をし、同じミスを繰り返さないこと。
そのためにも「部下に嫌われない叱り方とシチュエーション」をお知らせします。
叱ると怒るを区別せよ!部下が聴く耳を持つ言い方
怒ると叱るの区別はついていますか?
似て聞こえるかもしれません。
しかし怒るだけでは部下がうわべで謝罪するだけで、根本解決になりません。
あなたも経験ありませんか。ガミガミと怒鳴り散らす上司に対して、何とか上司の怒りを鎮めようと「申し訳ございません」と、ポーズとして謝罪を繰り返した経験。
おそらく1度くらいはあるのではないでしょうか。
しかし、上司の機嫌を回復させるための謝罪は、部下が同じミスを繰り返すリスクが高いと言えます。
必要なのは「叱る」を選ぶことです。
「怒る」は喜怒哀楽という言葉があるように、感情の高ぶりに伴って声を荒げることを指します。
感情に任せて「何をやっているんだ!」「お前がやる気がないからだろ」「ふざけんな」などのセリフは、怒るという行動です。
対する「叱る」は冷静に誤っている箇所を指摘して、改善を促していくことを指します。
「重大な結果を招いた要因はどこにある?」「桁の入力に十分注意しなさい」などのセリフは、以降同じようなミスが繰り返されないための建設的な「叱る」という行動です。
イライラするかもしれませんが、深呼吸をして気持ちを静めて「叱る」行動をとりましょう。気持ちをクールダウンさせることで、部下が聴く耳を持つ「叱る」行動をとることができます。
人前での叱責ではなく、個別で呼び出すべし
部下を叱るとき、シチュエーションに注意を払っていますか?
すぐに注意することが大事だと思い、多数の部下の目の前で叱責する方もいますが、その行動はNGアクションです。
あなたが課長だとして、多数の同僚や後輩がいる前で部長から「こないだのは間違っている」「どうしてこのようなミスが発生したんだ」などの叱責を受けたら、どのような気持ちになりますか。
惨めな気持ちになったり、多数の人の前での注意に恥ずかしさを覚えることでしょう。そのようなネガティブな気持ちは沸き起こり、心理的な距離が生まれかねません。
叱る場面では、個別で呼び出すようにしましょう。
その場で叱責する方がスピーディーでスパッといえますが、部下に嫌われてしまって今後の指示が表面的にしか受け取られなくなるのなら、そのデメリットは計り知れないものがあります。
特に大きなミスが起こったときには、上司側の気持ちのゆとりもなく、衝動的に「怒る」ことにつながりやすい傾向があります。
大きなミスや重大な事項ほど、すぐに叱るのではなく、「呼び出す」ようにしましょう。
「用件」「場所」「感情」の3つに注意を
大きなミスなら部下も心当たりがあるため「先日の件で」だけで通じることでしょう。
しかし、犯したミスへの罰の悪さで、部下の心理状態が不安定になっている恐れもあります。
円滑に進めるために、3つの注意点を守りましょう。
1つ目の注意点は「用件を具体的に伝えること」です。
「先日の件で今後のプロジェクトの進め方の改善を図りたい。14時より会議室Eに来るように」「例の件で1時間ほど話を聴きたい。13時からミーティングルームへ来てほしい」などのように具体的に伝えるようにしましょう。
例の件、だけでも通じますが、「意見を聞きたい」「今後の改善のために」などの言い方をすることで「怒られるだけでない」「再犯防止」などと、前向きに受け取ってもらいやすくなります。
部下が真面目で緊張しやすい場合には、いきなり呼び出すと、部下の心の準備ができていないこともあります。
「何時ごろから」「どのくらいの時間の話し合い」などの伝えましょう。
アナウンスをすることで事前準備や内容整理の時間を設けておくことで、時間も有効活用できるメリットがあります。
2つ目の注意点は「場所」です。
ときどきミーティングルームと言いつつも、作業スペースとパーテーションで区切られているだけで、声がだだ洩れのことがあります。それでは部下も安心して話すことができません。
なるべく「個室」で秘密が保たれる空間を選択しましょう。
個室であっても透明で外から様子がうかがえる場所では、お手洗いや給湯室へ向かう他の職員がのぞき見することもあります。部下も落ち着いて話しづらい環境です。
外からは様子が見えない会議室を選ぶことをおすすめします。
外から様子が見える場所しか手配できない場合には、なるべく見えづらい席に座るようにしたり、カーテンをかけたり、布の貼り付けをしたりなど、外から見づらい環境をつくる工夫をしましょう。
3つ目は「感情」です。
怒りの感情がだだ洩れでの呼び出しは、部下にも緊張感が漂います。
重大なミスをされた側として、イライラするのはやむを得ないものです。
しかしありのままの感情を出して部下を委縮させても、よいことは1つもありません。
感情を落ち着けるためには、呼吸を整えましょう。イライラしているときには呼吸が浅くなっています。
7~8秒かけて深呼吸を繰り返しましょう。感情も次第に穏やかになってきます。
部下を呼び出す前には深呼吸をしてから、「呼び出す目的」と「呼び出す場所」にも気を配りましょう。
人格否定はNG!間違いをただす「事柄否定」を
いざ、部下を呼び出して叱る場面になってときにやりがちなNG行動があります。
それが「人格否定の発言」です。
「そんな考え方だからダメだよ、お前は」「どうして一度でわからないんだ?頭はついているのか?」などの発言は部下の心を深く傷つけます。
ありえないと感じるミスであっても、人格を否定する発言はよしましょう。
部下が謝罪したとしても「この人はそんな人なんだ」「もう何を言っても無駄だ」と心の扉をバタンと固く閉じ、話を聴かなくなる恐れもあります。
叱責する場面であっても、あくまでも「ミスをした行動」や「注意が足りない姿勢」などの行動面の否定にとどめるべきです。さもなければ、信頼関係がズダズダに壊れます。
人格否定は、ミスをしたその人の性格やその人自身を否定する発言です。
対する事柄否定は、ミスをした行動や現象を否定する発言です。
人格否定と比較して、事柄否定の受けるダメージの方が明らかに少ないとされています。
「確認を怠った行動」を責められることはもっともだと受け止められたとしても、「確認できないなんて、注意力が散漫すぎる人間だ」「仕事にやる気がないから、確認が不十分なんだ」などの性格と結びつけた否定は、心を傷つけるだけです。
叱る理由は「同じミスを繰り返さない」ためでしょう。そのためにも本音を引き出すことが必要になることもあります。
「ダメ人間だからミスした」という前提ではなく、「きちんと仕事しているはずなのに、大きなミスをした。その原因はどこにあるんだ」というマインドで聞くようにしましょう。
聴く前提を変えるだけでも、場の雰囲気が大きく変わります。
ひょっとしたら煩雑すぎる業務の中で見間違いが起きたのかもしれません。
あるいは残業過多で注意力が散漫になっていた可能性もあるでしょう。
原因が明確になれば、対策が打てます。
まとめ
人間である以上はミスはつきものです。
しかし上司の発言や振る舞い次第では、部下の心の扉はバタンと閉じ、以降の注意に対して表面的にしか受け取ってもらえない事態を招きます。
組織としてもデメリットしかありません。怒ると叱るの違いを理解し、3つの注意点を守って叱る行動を選択するようにしましょう。
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