従来の暗号資産は現物資産との関係づけに限界があり、支払いツールとしての制限が大きくあります。そのため使用による価値よりも投資の価値を中心に拡大してきました。
しかし、一定の規制の強化の中でセキュリティシステムが強化され、またマネーロンダリングの防止などで、匿名性の否定などのある暗号資産では安全性の評価が生まれるでしょう。従来の暗号資産の改善や新しいセキュリティ性の強い暗号資産の登場があれば、暗号資産のデメリットやリスクを部分的に解決するものになります。
従来の暗号資産のデメリットやリスクを整理し、流動的な暗号資産の動向を見ていきましょう。
1.価格変動が激しいこと
暗号資産の歴史は誕生してから取引されている期間が株などと比べると短く、価格の変動が激しいという特徴を持ちます。
値動きが激しいことから投資商品として考えると株などと比べてハイリスクなものであり、しかも変動幅が大きくなりがちです。このような投資者の気分による価格の上下は、暗号資産の場合より顕著です。
決済の手段として考えると価格の変動の大きさは実用性に欠けます。さらに、通貨として利用するのであれば法定通貨の代わりとしては十分に機能しないという問題点があります。
暗号資産の価格変動が激しい理由は、通貨の持つ決済という本来の目的ではなく、投資目的で売買されることが多いという点です。投資を目的に暗号資産の取引をする多くの人は、値動きによる売買価格の差額で儲けることを目的として購入しています。その他暗号資産の事故や事件が起これば影響が暴落に結び付く場合があります。また、新しい暗号資産では認知度や人気が高まれば、需要が上がるため価格も上がります。
2.流動性が小さいこと
暗号資産を換金しようと思った時に、市場の取引量が少ないためすぐに売れなかったり、希望した価格で売れなかったりする、流動性が小さいことによる流動性リスクがあります。
ビットコイン価格が上昇して保有者が増えたと言っても、取引量はけっして多いとは言えないので、一気に同じ価格で売却するのは非常に困難です。
3. 即時決済が難しいこと
暗号資産での取引は、その取引内容に間違いがないかどうかを検証し、承認されて、初めて取引として成立・確定します。そのため、現金やクレジットカードのような「即時決済」がしにくいというデメリットがあります。
改善方法としては、決済システムを実装した「ウォレット」(暗号資産を保管する電子的な財布)の機能を使うことで、この問題を回避することができます。
また、近年ではクレジットカード会社が一部の暗号資産と提携することで、海外送金にかかる時間を短縮しようとする動きも見られます。
4. ハッキングやデータの紛失の可能性があること
暗号資産には法定通貨のように中央管理者がいないため、紛失や流出が起きた場合に暗号資産に投資した財産分を失う可能性があります。暗号資産は、PCやスマホにインストールしたウォレットと呼ばれるアプリで管理することが多いですが、インターネットに接続された状態ではハッキングされる可能性があります。ハッキングされると勝手に送金されてまったり、データが消失してしまうリスクがあります。
また、ウイルスが原因でパソコンやスマホが故障してしまい、暗号資産の送金ができなくなるというリスクもあります。それを回避するため、USBなどのオフラインの端末にデータを保管する方法があります。
オンライン上から切り離して保管するウォレットを「コールドウォレット」とよびます。取引所の場合でもコールドウォレットを適用して運営しているサイトもあります。取引所で保管をしておきたい場合には、そういった安全対策を講じているサイトを選ぶとよいでしょう。どのようなウォレットに保管する場合でも、少なからずリスクがあることを理解しておくことが大切です。いざというときのために資産を分散してオフラインでの管理をするなどの対策を取っておくことが必要です。
しかし、暗号資産自体が、ハッキングされて根幹から消失するというようなことは今まで起こっておらず、起こる可能性はかなり低いとされています。発生している事故・事件は取引所のセキュリティの弱さが原因です。
5.マネーロンダリングの可能性があること
暗号資産の送金システムが犯罪行為に使われる、マネーロンダリングの可能性があることが指摘されています。送金の基本条件として「本人確認」がありますが、匿名で口座を作れるならば、誰が送金したのか分からないということになり、マネーロンダリングや脱税目的で使われてしまうリスクがあります。
6. 法律による規制が予想されること
暗号資産は、従来の通貨の在り方とは大きく異なる存在です。世界的に見ると暗号資産に対する各国の目はきびしく、2018年3月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、暗号資産の動向に対しては「監視を求めること」という結論が出されています。
また、国別の動向では、2017年まで暗号資産の取引量が世界トップだった中国では、2017年9月に政府により暗号資産の取引が強く制限されるようになりました。韓国では犯罪の温床になるとの理由で、ビットコインだけでなく暗号資産は禁止され始めています。
現状では規制というより消費者事故を防ぐための注意喚起をしている現状です。
〇資料 平成2 9年9月2 9日公表 金融庁・消費者庁・警察庁 発表の相談例(用語は当時のまま)
【解約、返金に関するもの】
○アカウントを登録していた仮想通貨交換業者から、廃業する、と連絡があった。出金をしたいがメールの返信がない。今後、どう対応したらよいか。
○亡くなった弟が仮想通貨取引をしていたようだ。解約の仕方をメールで問い合わせたが仮想通貨交換業者から連絡がない。
○仮想通貨購入のため交換業者内の自身のウォレットに 10 万円を振り込んだつもりが、IDを誤り第三者のウォレットに振り込まれてしまった。返金してほしい。
【システムやセキュリティに関するもの】
○仮想通貨交換業者に 45,000 円送金したが、10 日以上経っても入金が反映されない。どのように対応したらよいか。
○仮想通貨交換業者のサーバに問題があり、売買したい時に即座に売り買いができない。業者への指導を希望する。
○仮想通貨を 700 万円分保有していたがハッキング被害に遭い全て失った。返金してほしい。
○保有していた仮想通貨が5倍に高騰したので売り、円に替えたところ、システムエラーを理由にトレード前に巻き戻された。
【事業者の対応に関するもの】
○仮想通貨を持っているが、仮想通貨交換業者のサイトからパスワードでログインができなくなった。1か月経っても解決しない。
○仮想通貨交換業者から別の交換業者への送金を依頼したところ、入金が反映されておらず、依頼した交換業者からは連絡がこない。
○今月仮想通貨を購入し、2万円増えたので出金しようとしたらログインできずに困っている。業者に問い合わせても返事がない。
○仮想通貨の取引をしているが、売買の反映にタイムラグがある。問合せメールをしても、反応がない。
○交換業者に対して、問合せしたいが、電話番号がどこに掲載されているのかわからない。
○業者の相談窓口に電話したにもかかわらず、メールでしか受け付けないと断られた。
以上の相談例から見ると、暗号資産の特性による問題点と交換業者の問題点を分離して検討することが必要と思われます。
まとめ
暗号資産のデメリットとリスクについて紹介しました。ブロックチェーンという技術を利用した暗号資産は将来性が期待されていますが、まだ成熟していないため問題点があります。暗号資産の使用性では多くの制限があり、投資対象の分野に属しているのが実態です。また、暗号資産を投資対象として売買する場合でも、リスクや問題点についてしっかりと把握しておくことが大切です。
コメントを残す