起業の際に壁になるのが資金です。
サラリーマンだとなかなか起業のための預貯金が十分貯まらない……
苦労するポイントです。
計画的に少しずつでも貯めていくこと、副業をすることなどが課題です。
家族や親族の支援があればプラスですが、簡単ではない場合が通常でしょう。
基本となる自己資金と、自己資金が足りない場合の公的融資および株式会社を設立した場合の出資金による資金調達についてまとめました。
自己資金準備
まず起業に必要な資金を想定することが必要です。
設備資金
事務所や店舗、設備などが必要な場合に算出します。
①内訳
事務所、店舗確保の資金で、敷金、保証金、前家賃など、内外装費、設備などがあります。
また、車両購入費、備品・事務用機器購入費などがあります。
相場で調べ、見積りを取れる場合は取る必要があるな
②金額 見積り必要
運転資金
①内訳
人件費、事務所・店舗賃借料、仕入費、原材料費、水光熱費、消耗品費、通信費、交通費、営業費などです。
②金額 見積り必要
③事業の見通しと資金繰りのめど
創業から半年後、1年後又は軌道に乗った後について想定してください。
また、売上高、売上原価(仕入高)、経費について計算した根拠を整理してください。
楽観値なのか、標準値なのか、悲観値なのかですが、楽観値だけでまとめないことが必要です。
- 売上高
- 売上原価(仕入高)
- 経費 人件費、家賃、支払利息、その他 合計
- 利益
- 資金繰りのめど
運転資金不足になる時はないかをチェックします。
以上を通して、自己資金で対応できるのかを検討します。
自己資金が不足する場合はお金を借りるか、法人化する場合は出資金を募ることができるかを検討しよう
公的創業融資制度の活用
お金を借りる場合は、家族、親族などから返済を迫られないお金を借りることができれば幸いです。
しかし、周囲に迷惑をかけたくないなどの思いがある場合は、公的融資を検討する方法があるぞ
公的融資で創業時に借りられるものでは日本政策金融公庫があります。
日本政策金融公庫の国民生活事業では、新たに事業を始める人や事業を開始して間もない人に、無担保・無保証人で利用できる「新創業融資制度」があります。
「新創業融資制度」の概要は次のようなものです。
(1) 利用できる人
新創業融資制度の案内によれば次の1~3のすべての要件に該当する人が対象です。
①創業の要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
②雇用創出等の要件
「雇用の創出を伴う事業を始める方」、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方(既に事業を始めている場合は、事業開始時に一定の要件に該当した方)
③自己資金要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方。ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、本要件を満たすものとします。
(2) 資金の使いみち
新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
(3) 融資限度額
3,000万円(うち運転資金1,500万円)
(4) ご返済期間
各種融資制度で定める返済期間以内
(5) 利率(年)
使いみち、融資期間、担保の有無などによって異なる利率が適用されます。
(6) 担保・保証人
原則不要
※原則、無担保無保証人の融資制度であり、代表者個人には責任が及ばないものとなっています。
会社設立による出資金の調達
(1) 他社の出資金を受け入れる時
①事業パートナーとの共同出資や協力者からの出資を積極的に受け入れたい時
事業を専業で一緒にやるパートナーがいる場合は、双方とも取締役になりどちらかが代表取締役となるのが基本でしょう。
いずれにしても双方とも出資することが基本だな
事業に専業ではやらないけれども外部での協力者も出資依頼の対象になります。
協力企業の経営者や個人としての知人などです。営業や技術での協力者で支援者の場合もあるでしょう。
協力企業の場合は事業の提携を通しての共通の利益目標があり位置づけが明確でしょう。
個人としての協力者や支援者は創業企業の将来への期待感があり将来的に自分もその企業に参加したいとか、起業家を個人的に応援したいとかそれぞれの出資動機はあるでしょう。
また小口出資になりますが、創業時の社員となる人が複数いて将来の幹部候補としての位置づけ、社員の持ち株制をとる場合もあります。
持ち株制は社員の経営参加意識の点でモチベーションになります。
② 自己資金だけでは資金が不足している時
事業自体は単独で経営する考えですが自己資金だけでは不足している場合です。
経営に参加するのでもなく事業に関わるのでもないので、出資依頼は個人的な縁故関係中心となるでしょう。
親・兄弟などの親族関係、親しい友人などです。個人的な支援者の位置づけです。
(2) 創業会社設立での出資協力を得た場合の効果
出資の意味は資金だけにとどまりません。
経営資源の人、物、金、情報の中の金以外のすべてで協力してもらえる可能性があるんだ
人は労力、能力、人脈などで、パートナーや協力者は自分を支えてくれます。
物は商品の営業販売、仕入など、商品やサービスの事業内容自体に関わります。
情報はビジネスの市場情報、マーケティングやノウハウ、アイデアに関わります。
出資協力を得た場合の効果は極めて大きなものとなる可能性があります。
資金不足の場合の出資と融資の相違ですが、当然ですが融資では返済条件が期限付きで厳しく定められています。
返済できない場合は連帯保証契約があれば社長などの連帯保証人が返済を迫られます。
担保が入っていれば取られてしまうリスクもあります。また当然利息が発生します。
これに引き換え出資では出資者は有限責任で株式の出資額以上の経営責任を負うわけではありませんが、企業経営者は株主に対して出資額を戻す義務はなく、赤字であれば配当の支払いの義務もありません。
もちろん株主に対する責任はあり経営改善に努力する必要はあるぞ
また融資は金融機関が行うため当然ですが返済の可能性をみた手堅いものになります。
起業家の経験や事業計画書を見ての判断になりますが、融資では金融機関は保守的です。
新しいビジネスや誰も手掛けていない商品などについては、過去のデータがなく不十分なのは当然ですが、評価してくれないものです。
(3) 出資依頼成功のポイント
創業期の会社設立での出資依頼の対象は、何よりも起業家がよく知っている人から始めます。
出資依頼の対象は次のような人が考えられます。
- これから一緒に仕事をするパートナーで取締役候補の人
- これから一緒に仕事をする予定の取引先の経営者
- 今までの仕事で個人的に付き合いのある取引先などの人
- 今までの仕事で個人的に信頼してもらっている顧客
- これから一緒に仕事をする社員候補で経営参加意識のある人
- 仕事には直接関係していない知人友人、家族、親族など
やはり起業家の人脈の資産が活きる点が大きな要素になります。
出資依頼のポイントですが、前提として起業家の人物を知っていることです。
起業家は何もしなくてもただそれだけでポイントをクリアーしています。
信用の基盤ができているってことだ
「これから一緒に仕事をする予定の取引先の経営者」は相手のビジネスメリットがあれば前向きに考えてくれるでしょう。
取引先予定企業から商品や材料を仕入れるなどの取引です。
「これから一緒に仕事をする社員候補で経営参加意識のある人」では創業期のメンバーとして将来社員を新たに採用した場合は指導的立場に立って欲しい、将来は幹部になって欲しいなどのモチベーションを持ってもらいます。
(4) 創業事業計画書の作成
出資を依頼する際には創業事業計画書があればプラスです。
決まった様式はありませんが、業務内容、商品・サービスの内容、商品・サービスの優位性、独自性や市場性についての記載が必要でしょう。
パワーポイントなどで資料作成するのがベターです。
項目の例は次のようなものです。全部を書けなくても主要な部分は押さえてください。
① 創業の動機
創業するのは、どのような目的、動機からですか?
② 経営者の略歴
略歴ついては、勤務先名、担当業務や役職、身につけた技能等についても記載したほうが具体的です。
- 内容
- 過去の事業経験
- 取得資格
- 知的財産権等
③ 取扱商品・サービス
- 取扱商品・サービスの内容
- セールスポイント
- 販売ターゲット・販売戦略
- 競合・市場など企業を取り巻く状況
④ 取引先・取引関係等
具体化している場合の各取引先の名前、所在地、シェア、掛け取引の割合、回収・支払の条件、人件費の支払日など。未定の場合は必要ありません。
- 販売先
- 仕入先
- 外注先
⑤ 従業員
- 常勤役員の人数
- 従業員が予定されている場合はその人数
⑥ 借入状況(借り入れがある場合)
- 借入先名
- 用途
- 借入残高
- 年間返済額
⑦ 必要な資金と調達方法
A.内訳
事務所、店舗確保の資金で敷金、保証金、前家賃など、内外装費、設備・車両購入費、備品・事務用機器購入費などがあります。
B.金額
A.内訳
人件費、事務所・店舗賃借料、仕入費、原材料費、水光熱費、消耗品費、通信費、交通費、営業費などです。
B.金額
方法と金額を書きます。
- 自己資金
- 親、兄弟、知人、友人からの借入
- 日本政策金融公庫からの借入
- 他の金融機関からの借入
⑧ 事業の見通し
下記に付き、創業当初、1年後又は軌道に乗った後について書いてください。また売上高、売上原価(仕入高)、経費について計算した根拠を書いてください。
- 売上高
- 売上原価(仕入高)
- 経費 人件費、家賃、支払利息、その他 合計
- 利益
まとめ
事業内容と見通しがしっかりしていれば公的融資を受けることは可能です。
ただし、融資額は多くはないかもしれません。
日本政策金融公庫の融資では、無担保・無保証人が魅力です。
保証人なしで融資を受けられることは他ではあまりありません。また、人脈があれば法人設立での出資も可能性があります。
特にビジネスパートナーからの出資の可能性はあります。
しかし、出資を受ければ拘束も受けます。
自由にやりたい場合は自己資金でやれる範囲でやることになります。
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